ゆとり国語教室のブログ

愛知県犬山市にある小さな国語教室です。目標は塾のいらない子を育てることです。

智恵子抄殺人事件

前に音読で高村光太郎の『智恵子抄』におさめられている「レモン哀歌」を読みました。

高村光太郎の妻である智恵子は、長く精神を病んだ末、肺結核で亡くなります。

レモン哀歌はその死の瞬間を描いた詩です。

作品の背景や言葉の意味をあえて説明せずに

「どういう状況の詩だと思う?」

と尋ねたところ、ある子が

 

「ん-、どっちが殺したのかな・・・」

 

と言うのでびっくりしてしまいました。

もう少し詳しく話を聞いてみると、

相手を殺してレモンを奪ったんだけど、それをかじった時に頭がまともに戻って、

「なんてことをしてしまったんだ!!」

って後悔して泣いてるところ。

と。

 

意外すぎる読みに、これは自分の想像で話を作ってしまったのかなとも思ったのですが、どこからそう考えたのかを尋ねると、実はきちんと本文の言葉に注目して読んでくれていました。

死の床→誰かが亡くなった

私の手からとった→レモンを取った(奪った)

意識を正常にした→我に返った

青く澄んだ目涙の色

と捉えて、そこから自分なりに解釈したそうです。

 

まだ低学年クラスなので拾い読みになって文全体の解釈が粗くなっていますが、文中の語を根拠に考えようとしているところがとても良いです。

物語や詩などの文学的文章は、書かれていない部分を読み取るのが難しく、慣れていないと完全に自分の想像だけで内容をとらえようとします。

しかし、こういう根拠のある読み方ができる子は、読解の精度が上がるにつれて解釈もどんどん上達して行くと思います。

突然の殺人事件にびっくりしてしまいましたが、今後の成長が楽しみだなと感じさせてくれる解釈でした。

主観と客観

先月から一部のクラスで主観・客観の違いについて勉強しています。

主観

自分だけの見方

感想・意見

人によって違う

 

客観

みんなの見方

事実・データ

誰からでも同じ

 

たとえば

「Aくんは背が高いよ」

とは主観。

自分は高いと思ってそう伝えても、聞いた子が高いと思うかどうかはわかりません。

会ってみたら

「なんだ、そうでもないじゃん」

と思うこともあります。

正確に伝えたいのであれば、

〇〇ぐらい高い

身長〇cmくらい

のように比べる対象を明確にするなど、客観的なデータを伝えるべきです。

 

小学校で取り組む作文のほとんどは、がんばったこと、楽しかったこと、これからの目標など、「自分」を中心にしたものがほとんど。

このため、客観的な表現をするのが苦手な子が多いようです。

 

自分の思いや考えを知ってもらいたいのであれば主観、状況を伝えたり議論をしたいのであれば客観というように、目的に応じて上手に使い分けられるように練習して行きましょう。

感想文「メロスはまたやる」

夏休みも終わり、今年も大勢の子たちと一緒に感想文を書き上げました。

今年の感想文で特に記憶に残っているのは、中学生の子が『走れメロス』を読んで書いた内容。

細かいところまでよく読んでいて、とてもおもしろい内容だったので、本人の了承を得て簡単に紹介します。

 

全体的な内容は、

メロスは自分の行動のせいで親友に迷惑をかけてしまったことを心から反省しているはず。

でもきっとメロスはまたやる。

というもの。

 

 

具体的には、

シラクスの市で「王様が人を殺す」という話をたった一人に聞いて、すぐに「生かしておけぬ!」と城に駆け出した。

しかも短剣を持っていたのですぐに捕まった。

確認も準備もしないでいきなり動き出してる。

メロスは衝動をコントロールできない人

捕まった後、妹に結婚式を挙げさせるために

よろしい、この市にセリヌンティウスという石工がいます。私の無二の友人だ。あれを、人質としてここに置いて行こう」

と、流れるようにセリヌンティウスを身代わりにした。

あの様子だとたぶんこれが初めてじゃない。

これまで何度も衝動で動いてはセリヌンティウスに尻拭いさせてきたんだと思う。

 

それ以外にもいろいろな場面でのメロスの行動を挙げて、

メロスに悪気はないし、すごくいい人だと思う。

だからきっと今回の件もすごく反省しているはず。

だけどよく考えて行動するということができないから、結局またやってしまうと思う。

こういう人は習慣をあらためたり、周りの人がサポートしないとずっと迷惑をかけ続けることになる。

と述べて行きます。

メロスに必要なのは正直さでも誠実さでもなく、自分のコントロール方法。

この感想を聞いてから走れメロスを読み返すと、もう完全にそういう人にしか見えなくなってしまいました。

 

こんなふうに自分独自の目線からの感想を持ち、人に伝えられることはとても素晴らしいことだと思います。

ありのままの感想を素直に書ける力を大切にしてほしいなと思います。

 

できたらすごい

授業では毎回音読を行います。

読む作品は有名な文学作品の中から月替わりで選んでいますが、どれも中学や高校で読むような難しいものばかりです。

しかも小学1年生から6年生まで全員同じものを読みます。

昨年度の音読作品はこちら↓

4月  走れメロス(太宰治)

5月  赤いろうそくと人魚(小川未明)

6月  曽根崎心中(近松門左衛門)

7月  日本国憲法

8月  おくのほそ道(松尾芭蕉)

9月  月夜の浜辺(中原中也)

10月 竹取物語(作者不詳)

11月 怪人二十面相(江戸川乱歩)

12月 もろびとこぞりて

1月  和俗童子訓(貝原益軒)

2月  山月記(中島敦)

3月  朝三暮四(列禦寇)

あきらかに難しいですよね。

プリントにはすべて読み仮名が振ってありますが、どれもほとんど原文のままです。

でも子どもたちは活き活きと読んでくれています。

それはできたらすごい!と言いながら授業をしているから。

 

 

ちゃんとやりなさいと言われると萎縮してしまう生徒も、できなくて当たり前だと思うと気軽に挑戦することができます。

「こんなの読める小学生はなかなかいないよ」

「高校の教科書によく出てくる話だよ」

なんて言われたら、鼻息が粗くなってしまいます。

中にはガッツリはまって図書館で同じ作品を探して調べる子もいますし、習ったことを家で家族に教えてあげているという話も聞きます。

自分だけが知ってるって嬉しいんですよね。

 

プリントは全学年共通ですが、クラスごとの習得度合いに応じて授業内容は変えていますから、低学年でも心配する必要はありません。

「やらなきゃ!」

じゃなくて、

「やれたらすごいじゃん!」

と思いながら学習を進めてもらえればと思っています。

タイプに合わせた学習法

卒業する生徒が多い一部のクラスで、最後の授業として

「タイプに合わせた学習法」

についてお話しました。

こちらの内容は保護者向け講座で行ったものですが、そろそろ自分で考えられる年齢かなと思って。

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伝えたのはだいたい以下の内容。

 

〇周りにできるのは環境を整えることだけ

周りの大人は環境は整えることはできるけれど、結局伸びるのは自分の力であることを忘れてはいけない。

そして無理矢理あなたを引っ張って伸ばそうとする大人に気を付けて。

 

〇自分のタイプを見極めてそれに合ったやり方を探そう。

一人一人向いているやり方は違う。

朝やるか夜やるか。予習をするか復習をするか。

一人でやるか誰かとやるか。

目から入れるか耳から入れるか。

自分の性格や得意不得意に合わせて、合ったやり方を考えよう。

いろんなタイプを紹介しながら

「〇〇くんは私の見たところだと予習の方が向いてるよね」

「教科書読んだりするよりも動画とかの方がいいかも」

「情報量が多いところでやると気が散るから、勉強専用の環境を作るか学習室みたいなところを利用した方がはかどると思う」

など、これまで見てきた私から見立てもお話ししました。

 

これからは一緒に勉強できないけれど、今度は自分たちで主導権を握りながら学習を進めていってほしいなと思います。

みんなの今後の成長を願ってます!

宣伝文を作る

最近主に高学年クラスでやっている練習。

「商品の宣伝文を作る」

というもの。

 

今回は教室でも使っている「ゲージパンチ」という、穴あけパンチを売る文章を考えてもらっています。

Amazonの紹介ページを見たり、実際のゲージパンチ、100円ショップの2穴パンチ、900円くらいのパンチを手に取って比べながら、どう宣伝するか考えます。

まずは

・ターゲット どんな職業、趣味、性格の人に売るか

・おすすめポイント 使い方の提案や商品の良いところなど

・クレーム対策 買ってからがっかりされないように、あらかじめ伝えておきたいこと

の3点を考えてもらいます。

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ゲージパンチはルーズリーフのようにファイルにはさめる穴があけられるのが魅力ですが、一度に4~5枚しか穴を開けられないし、2000円以上するものです。

実際に手に取った子たちからも

「自分なら安いしたくさん開けられるからこっちの900円くらいの方がいい」

という意見があがりました。

 

今回のポイントはそこです。

自分が欲しくなくても、欲しがる人を想像しながら考える

それをできるようになってほしいのです。

 

物の価値は人によって違っていて、ある人には便利で手放せないものでも、別の人には全く使えないガラクタ同然だったりします。

「自分はこっちの方がいいけど、こういう人だったらこっちが欲しいだろうな」

「こんな仕事の人だったら、少しくらい高くてもこの商品を喜ぶだろうな」

と、いろいろ考えてみましょう。

 

ふだんの作文では「自分はこう思う」という内容を書くことが多いですが、

「楽しくなかったから書けない」

「嫌いだからおすすめできない」

と、困ってしまう子が時々います。

そんな時はこんなふうに別の人を想定して「こういう人にはいいと思うよ」と書けると、気持ちも楽になるのではないかと思います。

休講日の決め方

今日は休講日の決め方についてお話します。

 

教室の休講日はだいたいいつも3か月前に決めて、毎月のお手紙で告知します。

どのクラスも基本的に1ヶ月4コマなので、5週ある時は1回休講日をいれます。

いつを休みにするかは私の都合にもよりますが、特に予定がないときは欠席者の多い祝日や学校行事の日を選ぶことが多いです。

 

また、1年の最低授業回数を44回としていますので、それを下回らない範囲でお休みを設定することもあります。

有給のようなものですね。

普通に月4回授業を行うと1年に48回になるので、それぞれのクラスに年4回まで私が自由に設定できることになります。

たまに3回しか授業がない月がありますが、こちらがそのお休みです。

これを使うのは

・繁忙期のスケジュール&体調管理目的

・子どもの学校行事や自分の予定がある時

が多いですが、それ以外にもお盆、年末、春休みなどにも使います。

いつもだいたい年末までに2回ずつ休みを取り、残りの2回は病気が流行しやすい1~3月に使えるように取っておきます。

 

教室を開いて10年目ですが、これまで取得した当日の急なお休みは、家族のインフルエンザと、大雨による増水の時のみです。

意外と休まずやれています。

 

今年はコロナのせいで子の学校行事がずれたり、オリンピックで祝日が移動したりして休講計画に頭を悩ませています。

生徒たちにも

「〇曜日はお休みが多くていいなー」

と言われることもありました。

しかし、1年通して各クラスに偏りがないように数えながら取得していますので、その旨ご了承いただけるとありがたいです。