ゆとり国語教室のブログ

愛知県犬山市にある小さな国語教室です。目標は塾のいらない子を育てることです。

感想文指導のコツ① ~いきなり原稿用紙に書かない~

夏休みが始まっていますが、みなさん夏を満喫していらっしゃいますか?

私は季節を感じる間もなく、毎日朝から晩まで読書感想文指導をしています。

夏休みがはじまってからの十日ほどで、原稿用紙100枚を消費しました。

もうしばらく、感想文漬けの生活になりそうです。

 

たくさんの方のご予約をいただきましたが、中には都合が合わなかったり、予約がいっぱいで受講できなかったという方もいらっしゃるかもしれません。

親子で取り組まれる方のために、私が気をつけていることをいくつかここに書いておこうと思います。

 

今日のポイントは

いきなり原稿用紙にかかせない

ということ。

 

私の講座は1.5時間×2回。

ほぼ3時間で感想文を書き上げるのですが、原稿用紙に向かって文を書いているのはその半分程度です。

残りの半分は何をしているのかと言うと、子どもと一緒に打ち合わせをしています。

どんなことを伝える文を書くのか、そのためにどんな話題を出すのか、どういう順番で話を進めてゆくのか、本人も指導する側も納得が行くまで話し合います。

 

書くことに慣れていない子の文章を解読するのはかなり大変です。

一文一文は上手に書ける子でも、書いているうちにどんどん話が脱線して行き、どこへ向かっているのかわからない状態になる場合もあります。

「何を書きたいのかわからないから、どこをどう直したらいいのかわからない」

ということになると、指導する側も困ってしまいます。

だからこそ、事前にしっかり打ち合わせをしておくのです。

 

「まず思ったまま書いてごらん」と、一通り書かせてから内容を確認することも可能ですが、それをすると子どもはかなりの量の文章を書かなくてはならず、途中で疲れて不機嫌になってしまいます。

だから文字にする前に内容を確認し、

「ここはこういう話を書くっていってたけど、この書き方だと意味を勘違いされるんじゃない?」

「次でこの話をする予定だから、この文はこんな感じでよくない?」

という具合にアドバイスをしていきます。

 

これだけで、子どもの作文の意図に頭を悩ませる手間も省けてかなり楽になると思いますよ。

 

 

次は打ち合わせの段階で一緒に作る、作文の「設計図」についてお話したいと思います。

★続き★

感想文指導のコツ②~設計図を作る~

感想文指導のコツ③~下書きの進め方~

感想を引き出すキーワード

ブログ更新をサボっている間に、季節はどんどん夏に向かっています(笑)

教室の生徒たちには7月8月にかけて、授業の中で読書感想文を一本書いてもらいます。

6月はそのための準備期間ということで、感想の出し方や長い文を書くときの注意点などを勉強しました。

 

感想文が苦手な子がよく口にするのが

何を書いたらいいのかわからない

ということ。

話を聞いてみると

「面白かった」

「見習いたいと思った」

「すごいなあと思った」

など、一言くらいの感想は出るようなのですが、そこから続かない様子。

だから授業では感想を掘り下げるためのキーワードをいくつか用意しました。

 

理由

なぜかというと、どうしてかというと

 

疑問と予想

どうして、なぜ~なのだろう?

→きっと~だからだと思う

 

比べる

ふつうだったら・・・。

僕だったら

 

もしもの話

もし同じことが身近で起こったら

もしこんな主人公が友達だったら

もしこの話で、こういうことが起こったら

 

別のエピソードを引用

前に似たような体験をした

別の本ではこうだった

友達がこんなことを言っていた

 

どんどん感想が出てくる場合は無理に使う必要はありませんが、もし感想を語るのに行き詰まったら、これらのキーワードで続きを考えて見ましょう。

たとえば「主人公ってすごい」で止まってしまったら「なぜならこういう場面でこんなことをしていたから」と、主人公のすごい箇所を詳しく説明します。

さらに「ふつうだったらこうすると思う」「僕だったらできなさそう」と繋げたり、実際身近にそんな「ふつうだったら」「僕だったら」の体験があるならここで紹介したり。

「どうして主人公はこんなふうにできたんだろう?」と疑問をなげかけ、「きっとこういう経験があったから」など、自分なりの答えを考えます。

「もしもその経験がなかったらできただろうか?」もしくは「もし自分にもそんな経験があればできるだろうか?」ともしもの話を想定することでまた話を膨らませることもできます。

そしてまた、「どうしてこういう経験があるとこんなことができるんだろう」と疑問を投げかける・・・。

 

という具合に、キーワードから思いつく内容をどんどん追加していきます。

同じキーワードを何度使っても大丈夫です。

この作業を繰り返していくうちに自分の感想をどんどん掘り下げて行くことができます。

 

低学年のお子さんの場合は、保護者の方が

「へえ、どうしてそう思ったの?」

「なんでそうなったと思う?」

「お友達に似たような子いる?」

など質問を投げかけてあげるとスムーズだと思います。

1行2行で行き詰まってしまう人はぜひためしてみてくださいね。

 

自己分析

年度がかわってあわただしくすごしているうちに、すっかりブログ更新を怠ってしまいました。

これから書くのは、年度末に教室のみんなにやってもらった作業のお話です。

 

授業の中で同じ内容をいっせいに教えても、習得度合いは人によってさまざまです。

つまずく場所や、納得する説明方法もバラバラ。

だからどんなにうまい教え方をしても、全員一人残らずわかる!ということはなかなかありません。

学校の授業や教科書は、できるだけ大勢の人が理解しやすいようにできていますが、理解の仕方が他と違うタイプの子は、頭が悪くなくても苦労することになります。

 

この教室に通っている生徒たちの特徴はできるだけ私が把握して、その子に合わせて教えているつもりですが、私にも限界がありますし一生勉強に付き合えるわけではありません。

進学するたびに合う塾を探すのも大変ですし、学校に

「うちの子に合う教え方をしてください」

と頼むのも現実的ではありません。

一般的な学校の教え方に合わないのはその子のせいではありませんが、合わないからといって待ってはもらえません。

 

だから子どもたちには、一緒に勉強できる今のうちに、自分の学習の特徴を知り、自分に合った学習方法を見つけてほしいのです。

そのために行っているのが「自己分析」の練習です。

たいそうなことをするわけではないのですが、生徒一人一人に

●今、自分ができていること

●できていないこと

●できていない原因(なぜできないのか)

●その対策(どうしたらできるようになりそうか)

を、文にしてもらいます。

 

特に重要なのは、できていない原因と対策の部分です。

ここはできるだけ具体的に、くわしく書いてもらいます。

ふだん、ほとんどの子は、ただ

「私これがだめなんだー」

「こういうの苦手」

と、ぼやくだけで通り過ぎてしまいますし、じゃあどうしようかと尋ねると多くの子が

「たくさんやる」

「もっとがんばる」

と、安易に答えます。

しっかり向き合って、何がいけないのか、どうやったらできるかよく考える、それだけで学習の仕方はかわってきます。

 

たとえば「漢字がおぼえられない」と書いてくれた子は何人もいましたが、よくよく話を聞いてみると

「書くのがおそいから、練習して覚えようとしても時間がかかりすぎてしまう」

「覚えるのはできるけれど、時間がたつとすぐ忘れてしまう」

「きちんと覚えたつもりでも、テストのときに書き方が悪くてバツになってしまう」

など、人によっていろいろな原因が挙げられていました。

原因が見えてくれば「漢字が苦手→漢字の練習をする」という方法から、さらに自分に合った対策が立てられます。

 

なんとなくできない。

なんとなく遅れてる。

そういう子は、一緒に「何がいけないのかな?」「何をやったらよくなるかな?」と一度考えてみてください。

こういう作業を繰り返すうちに、自分に合ったやりかたがみえてくるはずです。

音読のはなし3~練習メニューの紹介~

この話は

音読のはなし1~効果について~

音読のはなし2~最高の音読とは~

の続きです。

 

音読がすごく役に立つよ、奥深いんだよという話は以前書いたとおりなのですが、じゃあどうやって練習しよう?という方のために、教室で音読プリントを使って実際に行っている練習メニューを紹介します。

 

★スラスラ読み

範囲を選んで、一文字も間違えずに読めるように練習します。

「できる」と思ったら読み上げテスト。

合否を判定する人が一人必要です。

お友達や兄弟、大人の方に協力してもらいましょう。

一箇所でも間違えたらやりなおしです。

句読点でゆっくりためて読むのはOKですが、言葉のかたまりは区切ってはいけません。

だから一文字一文字たどりながら読むのはNGです。

 

「に」「を」など助詞を変えてしまったり、勝手に補ってミスする子が多いので、合否判定する人は同じ文を見ながら厳しくチェックしてください。

助詞や文末を思い込みで読み飛ばしてしまう子や、文字を読むのにせいいっぱいで、読んでも意味が頭に入ってこない子におすすめです。

 

教室では、練習が甘くて何度も間違えてはテストを繰り返す子もいるので、3回挑戦して間違えたらペナルティで本文書写などをさせています。

 

★スピード読み

早口言葉のようにひたすらスピーディーに読みます。

文字認識力を高めるための練習です。

普通の音読では「ゆっくり」「はっきり」読むことを勧められますが、ここでは見た文字を瞬時に把握して発音することを目的としているので、聞きやすいかどうかはあまり気にしません。

口がもたついて話しベタな子の練習にも良いと思います。

 

★聞き読み

本文を見ず、私が読んだ文を聞いてそのまま復唱します。

言葉を正確に聞き取る練習です。

聞いた音をそのまま発音するというのは、相手の言葉を理解するためにも大切な技術です。

苦手な子は文節程度の長さしか聞き取ることができませんが、慣れてくると1~2行くらいの長い文でもスラスラ復唱することができます。

授業中に聞き逃しが多かったり、単語を拾って適当に理解しようとする子に有効だと思います。

 

★2分間暗記

本文を暗唱する練習ですが、いつまでかかってもいいわけではありません。

2分という限られた時間の中で、何行覚えられるかを競います。

最初の一行ですぐに思い出せなくなってしまう子もいますが、前よりも1行でも多く覚えることを目標に練習することで、少しずつ覚えられる量が増えていきます。

2分という時間をどう使うのか、短時間に効率よく覚えるためにはどうしたらいいのか、どんな覚え方が自分に合っているのかを考えて、工夫していきます。

暗記時間は何分でも良いのですが、あまり長いと集中力が途切れたり余計なことをしようとするので、生徒が「短い!」と思う2~3分程度が良いと思います。

 

 

ご家庭でもできるメニューなので、よかったらぜひ試してみてください。

どんな力を鍛えたいのか意識すると、効果は大きいと思います。

音読のはなし2~最高の音読とは~

前回の「音読のはなし1~効果について~」の続きのお話。

 

小学生の子供たちは、学校の授業中や宿題などで何かと音読する機会が多いと思います。

最初はつっかえつっかえ読んでいた子たちも、繰り返し読むうちにだんだんスラスラ読めるようになります。

でもそれでゴールと思ってる子が意外と多いんです。

 

音読ってかなり奥深いものです。

私が考える最高の音読は、

 

初めて読む文章でも間違えずスラスラ読み上げる。

それと同時に読みながら場面の内容を把握し、登場人物の状況や気持ちを掴む。

読み取った内容に対してどんな調子、どんな早さで読むのがふさわしいのかを即座に判断して、実行する。

 

というようなものです。

目の前の文章をはっきり間違えずに読みつつ、その先の内容に目を通して声の出し方を決める・・・というように、一度にやらなくてはいけないことがたくさんあります。

これをできるようにするためには、

 

●すばやく正確に文字を認識する力

●思った言葉を滑らかに声に出す力

●先の内容を見て瞬時に内容を把握する力。

●内容に合わせてどんな読み方がふさわしいのか考える力

 

 など、たくさんの能力が必要になってきます。

ひとつひとつ出来ていても、同時に駆使するとなると難易度はさらにアップします。

日本語を相当しっかり操れていないとできないことです。

 

こういう音読ができるようになると、たった1回読むだけでしっかり内容が頭に入ってきます。

人前で発言するときに、頭の中で次に話す内容をチェックしたり、どんな口調がふさわしいか考える余裕もできます。

 

 

もうスラスラ読めるようになって

「音読なんて面倒!」

「読めるんだから練習する意味ないし」

と思っている人、まだまだ先は長いですよ。

せっかくスラスラ読めるようになったのだから、そこからさらに次のステップに進めるように練習してみましょう。

次回は練習方法についてお話したいと思います。

音読のはなし1~効果について~

教室ではどの学年もまず最初に必ず音読を行っています。

読む文章は月変わり。

一年に12作品読むことになります。

これまでにも枕草子方丈記などの古典作品や、いろは歌、走れメロス蟹工船日本国憲法などなど、いろいろな作品をよんできました。

 

「国語力を上げるには音読がいい」

とはよく言われますが、具体的に何が良いのか意外に知らない方が多いように思います。

今日はその効果について書いてみようと思います。

 

●意味が頭に入りやすい

これはよく言われることですが、音読をすると自分の声を耳で聞くことになります。

文字を目で見て、耳で音を聞く。

これを同時に行うことによって、よりその文章の内容が読み手の中に定着する効果があります。

 

●文字認識力が高まる

スラスラ文を読むということは、文字の認識が早くなるということでもあります。

文字を一瞬で判断できるようになれば、意味が頭に入ってくるのもはやくなります。

たとえばTシャツなどのロゴに

「わたしは せかいいちの てんさいです!」

と書かれていたら、大勢の人がすれ違う瞬間にすぐに「天才なんだ(笑)」と反応してくれると思います。

でも

「watashiha sekaiichino tensaidesu!」

だったらどうでしょう?

日本人のほとんどはローマ字を読めると思いますが、これを見てすぐに「天才なんだ(笑)」と反応する人はきっとあまりいません。

すれ違うくらいでは何が書かれているのか気がつかない人も多いでしょう。

日本語で書かれていたら、読むつもりがなくても見た瞬間に意味まで認識してしまいますが、読み慣れないローマ字やカタカナで書かれていた場合は、内容を理解するまでに数秒かかります。

 

音読の練習をして、見た瞬間に意味を理解できるくらい文字を認識できるようにすることは、読解力を高めるためにも大切なのです。

 

●曖昧な言葉がはっきりする

黙読して読めた気になっても、声に出してみると意外に漢字の読みが曖昧だったり、知らない言葉をなんとなく読み飛ばしてしまっていることがあります。

また、黙読では気がつかないうちにたくさんの文字を読み飛ばしてしまっている人もいます。

すべての文字を声に出して読むことは、自分の読みのあやふやな部分をはっきりさせる効果があるのです。

 

 

そのほかにもいろいろ細かい利点はあるのですが、ただ声に出して読めば身に付くというありません。

どんな力を身につけたいのか意識することや、それに合わせた読み方というものがあります。

次回はそのあたりについて、また詳しく書いていこうと思います。

2分間暗記~意味派と音派~

「いまから2分間はかります。覚えられるところまででいいので、できるだけたくさん暗唱してください」

毎回ではないのですが、こんな感じで音読の本文を暗唱させることがあります。

アラームをセットして2分間はかったら、みんながどこまで覚えたか一人一人テストします。

 

これは本文を暗記することそのものよりも、情報を頭の中に入れる練習として行っています。

音読の文は難しい言い回しや知らない言葉も多いので、覚えるのはかなり大変です。

ただひたすら2分間本文を読み上げて、結局2行くらいしか覚えられなかった・・・なんて子もいます。

でも限られた時間の中で一行でも多く覚えようと練習を繰り返すと、徐々に2分間の使い方がかわってくるのです。

はじめは

「覚えられない!無理!!」

と嘆くだけで2分が経過してしまったけれど、回数を重ねるごとに少しずつ言える量を増やし、今では2分でほぼ全て覚えきってしまう子もいます。

この2分ていう時間もちょうどいいみたいです。

これだけ短いと余分なことは何もできないから、集中するしかないですよね。

 

ところで文章を覚えるとき、

意味を中心に覚えているか、音を中心に覚えているか

によって、間違え方が違います。

 

意味派の子は文章の内容を手がかりに覚えます。

ストーリーの流れを思い浮かべて、それを手がかりに文を再構成していくので、間違えるときは「本文には全然でてこないけれど意味的には同じ言葉」にすりかわったりします。

たとえば「横になって」というかわりに「寝転んで」、「見下ろしながら」のかわりに「上から見ながら」みたいに。

 

一方音派の子は言葉の響きが一番の手がかりになります。

あまり意味を気にしていないのでちんぷんかんぷんな文になったりしますが、たとえば「穴から鼻を抜く」を「鼻から穴を抜く」と間違えるなど、音の響きはそんなに違わなかったりします。

 

意味派の子は比較的にたくさんの量が覚えられるかわりに、助詞など細かい部分を間違えやすくなりますし、古文などの意味がわかりにくい文はなかなか頭に入りません。

音派の子は呪文のような意味のわからない言葉も以外にスラスラ覚えてしまうので、文の難易度にあまり振り回されませんが、一度に覚えられる量は少なめで、記憶がとだえると続きを思い出すきっかけがつかめなくなります。

どちらも一長一短、「こちらが優れている」というものではありません。

でも、自分の特徴がわかってくると、

「意味派だからわからない言葉はちゃんと把握しておかなくちゃ」

「いつも音が中心だけど、文のイメージもあわせて覚えてみよう」

など、間違えやすいところや自分に合った覚え方を考える手がかりになります。

話のタネに「自分はどっち派かな?」と、親子でちょっと自己診断してみてもいいかもしれませんよ。