今月特に気を付けてもらっているのは
「頭の中で映像化しながら読む」
ということです。
その訓練として、以下の一文をみんなにジェスチャーで再現してもらいました。
セリヌンティウスは、
すべてを 察した 様子で 首肯(うなず)き、
刑場一ぱいに 鳴り響くほど 音高く
メロスの 右頬を 殴った。
ギリギリで間に合ったメロスが、このままでは自分は君と抱擁する資格がないから殴ってくれと頼んだことに対する、セリヌンティウスの反応です。
みんな思い思いのセリヌンパンチ(笑)を繰り広げてくれましたが、人によって微妙に動作が違います。
お互いの動作の違いを見ながら、どれがこの場面にふさわしいのか相談してもらいました。
うなずきかた
「命がけで戻ってきたところだから、あんまり軽くない方がいいんじゃない?」
「ゆっくり深くうなずく感じ」
「2回くらいやってもいい」
なぐる手の形
「手はパーだと思う。だって刑場いっぱいに鳴り響きそう」
「いや、グーでしょ。パーだったらビンタじゃん」
「殴るだとグーで、叩くだったらパーがいいと思う」
なぐり方
「すごい力入れないと音そんなに鳴らないから、勢いがいる」
「こんな感じ」バシッ!!!
下から上に向かってパンチをした子に対して
「それだとあごにあたるじゃん。ほっぺに当てるから横からいかなきゃ」
意外にみんな、いろいろなこだわりポイントがあります。
また、教室でほぼ全員の子が右手でパンチをしていたのですが、話し合いの過程で
あれ・・・なんかおかしくない?
そう、右からのパンチではメロスの左頬を殴ってしまうことに気が付きます。
ちょっと角度を変えて右頬を狙ってみたら音高く鳴る勢いがでない。
じゃあセリヌンパンチは左手なんじゃない??
というところまで考えることができました。
左手で殴ったということから、またさらに解釈が広がります。
「セリヌンティウスは左利きだったのかな」
「処刑されそうになったから、右手をけがしちゃったのかも」
「メロスが力いっぱい殴れって言ったけど、あんまり痛いとかわいそうだから利き手じゃない方で殴ったんじゃない?」
このように言葉を丁寧に拾ってひとつひとつの状況を考えてみると、ただストーリーを追うだけよりもずっと深い読みをすることができます。
生徒たちも謎解きのような感覚で、楽しく内容を考えることができたようです。
詩や物語などの文学作品では、作者がこだわりぬいてひとつひとつの表現を選んでいます。
子どもたちにはぜひ、それらに気付けるような良い読み手になってもらえればと思います。