ゆとり国語教室のブログ

愛知県犬山市にある小さな国語教室です。目標は塾のいらない子を育てることです。

音読のはなし2~最高の音読とは~

前回の「音読のはなし1~効果について~」の続きのお話。

 

小学生の子供たちは、学校の授業中や宿題などで何かと音読する機会が多いと思います。

最初はつっかえつっかえ読んでいた子たちも、繰り返し読むうちにだんだんスラスラ読めるようになります。

でもそれでゴールと思ってる子が意外と多いんです。

 

音読ってかなり奥深いものです。

私が考える最高の音読は、

 

初めて読む文章でも間違えずスラスラ読み上げる。

それと同時に読みながら場面の内容を把握し、登場人物の状況や気持ちを掴む。

読み取った内容に対してどんな調子、どんな早さで読むのがふさわしいのかを即座に判断して、実行する。

 

というようなものです。

目の前の文章をはっきり間違えずに読みつつ、その先の内容に目を通して声の出し方を決める・・・というように、一度にやらなくてはいけないことがたくさんあります。

これをできるようにするためには、

 

●すばやく正確に文字を認識する力

●思った言葉を滑らかに声に出す力

●先の内容を見て瞬時に内容を把握する力。

●内容に合わせてどんな読み方がふさわしいのか考える力

 

 など、たくさんの能力が必要になってきます。

ひとつひとつ出来ていても、同時に駆使するとなると難易度はさらにアップします。

日本語を相当しっかり操れていないとできないことです。

 

こういう音読ができるようになると、たった1回読むだけでしっかり内容が頭に入ってきます。

人前で発言するときに、頭の中で次に話す内容をチェックしたり、どんな口調がふさわしいか考える余裕もできます。

 

 

もうスラスラ読めるようになって

「音読なんて面倒!」

「読めるんだから練習する意味ないし」

と思っている人、まだまだ先は長いですよ。

せっかくスラスラ読めるようになったのだから、そこからさらに次のステップに進めるように練習してみましょう。

次回は練習方法についてお話したいと思います。

音読のはなし1~効果について~

教室ではどの学年もまず最初に必ず音読を行っています。

読む文章は月変わり。

一年に12作品読むことになります。

これまでにも枕草子方丈記などの古典作品や、いろは歌、走れメロス蟹工船日本国憲法などなど、いろいろな作品をよんできました。

 

「国語力を上げるには音読がいい」

とはよく言われますが、具体的に何が良いのか意外に知らない方が多いように思います。

今日はその効果について書いてみようと思います。

 

●意味が頭に入りやすい

これはよく言われることですが、音読をすると自分の声を耳で聞くことになります。

文字を目で見て、耳で音を聞く。

これを同時に行うことによって、よりその文章の内容が読み手の中に定着する効果があります。

 

●文字認識力が高まる

スラスラ文を読むということは、文字の認識が早くなるということでもあります。

文字を一瞬で判断できるようになれば、意味が頭に入ってくるのもはやくなります。

たとえばTシャツなどのロゴに

「わたしは せかいいちの てんさいです!」

と書かれていたら、大勢の人がすれ違う瞬間にすぐに「天才なんだ(笑)」と反応してくれると思います。

でも

「watashiha sekaiichino tensaidesu!」

だったらどうでしょう?

日本人のほとんどはローマ字を読めると思いますが、これを見てすぐに「天才なんだ(笑)」と反応する人はきっとあまりいません。

すれ違うくらいでは何が書かれているのか気がつかない人も多いでしょう。

日本語で書かれていたら、読むつもりがなくても見た瞬間に意味まで認識してしまいますが、読み慣れないローマ字やカタカナで書かれていた場合は、内容を理解するまでに数秒かかります。

 

音読の練習をして、見た瞬間に意味を理解できるくらい文字を認識できるようにすることは、読解力を高めるためにも大切なのです。

 

●曖昧な言葉がはっきりする

黙読して読めた気になっても、声に出してみると意外に漢字の読みが曖昧だったり、知らない言葉をなんとなく読み飛ばしてしまっていることがあります。

また、黙読では気がつかないうちにたくさんの文字を読み飛ばしてしまっている人もいます。

すべての文字を声に出して読むことは、自分の読みのあやふやな部分をはっきりさせる効果があるのです。

 

 

そのほかにもいろいろ細かい利点はあるのですが、ただ声に出して読めば身に付くというありません。

どんな力を身につけたいのか意識することや、それに合わせた読み方というものがあります。

次回はそのあたりについて、また詳しく書いていこうと思います。

2分間暗記~意味派と音派~

「いまから2分間はかります。覚えられるところまででいいので、できるだけたくさん暗唱してください」

毎回ではないのですが、こんな感じで音読の本文を暗唱させることがあります。

アラームをセットして2分間はかったら、みんながどこまで覚えたか一人一人テストします。

 

これは本文を暗記することそのものよりも、情報を頭の中に入れる練習として行っています。

音読の文は難しい言い回しや知らない言葉も多いので、覚えるのはかなり大変です。

ただひたすら2分間本文を読み上げて、結局2行くらいしか覚えられなかった・・・なんて子もいます。

でも限られた時間の中で一行でも多く覚えようと練習を繰り返すと、徐々に2分間の使い方がかわってくるのです。

はじめは

「覚えられない!無理!!」

と嘆くだけで2分が経過してしまったけれど、回数を重ねるごとに少しずつ言える量を増やし、今では2分でほぼ全て覚えきってしまう子もいます。

この2分ていう時間もちょうどいいみたいです。

これだけ短いと余分なことは何もできないから、集中するしかないですよね。

 

ところで文章を覚えるとき、

意味を中心に覚えているか、音を中心に覚えているか

によって、間違え方が違います。

 

意味派の子は文章の内容を手がかりに覚えます。

ストーリーの流れを思い浮かべて、それを手がかりに文を再構成していくので、間違えるときは「本文には全然でてこないけれど意味的には同じ言葉」にすりかわったりします。

たとえば「横になって」というかわりに「寝転んで」、「見下ろしながら」のかわりに「上から見ながら」みたいに。

 

一方音派の子は言葉の響きが一番の手がかりになります。

あまり意味を気にしていないのでちんぷんかんぷんな文になったりしますが、たとえば「穴から鼻を抜く」を「鼻から穴を抜く」と間違えるなど、音の響きはそんなに違わなかったりします。

 

意味派の子は比較的にたくさんの量が覚えられるかわりに、助詞など細かい部分を間違えやすくなりますし、古文などの意味がわかりにくい文はなかなか頭に入りません。

音派の子は呪文のような意味のわからない言葉も以外にスラスラ覚えてしまうので、文の難易度にあまり振り回されませんが、一度に覚えられる量は少なめで、記憶がとだえると続きを思い出すきっかけがつかめなくなります。

どちらも一長一短、「こちらが優れている」というものではありません。

でも、自分の特徴がわかってくると、

「意味派だからわからない言葉はちゃんと把握しておかなくちゃ」

「いつも音が中心だけど、文のイメージもあわせて覚えてみよう」

など、間違えやすいところや自分に合った覚え方を考える手がかりになります。

話のタネに「自分はどっち派かな?」と、親子でちょっと自己診断してみてもいいかもしれませんよ。

ネガティブ作文

最近教室ではネガティブ作文に取り組んでもらっています。

名前のとおり、嫌い、やりたくない、やめてほしい・・・というマイナスな気持ちを書く作文です。

先週は自分が「できればこの世からなくなってほしいと思う嫌いな人・物・出来事」について、嫌いな理由と、どうなったらそれが嫌いじゃなくなるのかを添えて文にしてもらいました。

今週は「将来やりたくない職業」を書いてもらっています。

 

学校などで書く作文のほとんどは、いいことばかりです。

好きなこと、楽しかった思い出、将来の夢・・・。

でも人間の感情ってそんないいことばかりじゃないですよね。

嫌いなものは嫌い。

思ってしまうものは仕方がないことです。

でもいいことばかり出力しているうちに、自分のマイナスな気持ちにふたをして本心が言えなくなる子もいます。

ただ「あいつウザイ」「これ最悪!」と言うだけではただの愚痴ですが、丁寧にその嫌いのもとを考えていくと、案外「じゃあこうすればいいんだ」なんて解決策が浮かんだりするものです。

多感なこの時期に自分のマイナス部分にきちんと向かい合うことは、前向きに生きてゆくためにもとても大切なことだと思います。

 

また、いい話はちょっとくらい言葉が拙くてもうまく伝わりますが、悪い話を角が立たないように人に伝えるにはかなりの国語力が必要です。

親切でプレゼントしてくれるいつものお菓子が口に合わない、相手の洋服が似合っていない、手伝ってくれてるけどかえって邪魔、相手が猛烈にオススメしてくれる商品を断りたい。

話をあわせて我慢していては自分がつらいだけ、でもそのまま言って相手の気分を損ねたらトラブルの原因にもなります。

高学年クラスではできればこういうマイナスの気持ちを、どうやって柔らかく相手に伝えるのかも一緒に考えて行きたいと思います。

 

ネガティブなお題を出すと、いつも気取った文章を書いてる子たちも個性的なおもしろい作文を書いてきてくれるので、読んでいる私もとても楽しいです。

その子のことが、またさらによくわかった気がします。

大人はつい子供たちに望ましい気持ちばかり求めがちですが、たまにはこういうマイナスな気持ちをゆっくり話し合ってみるのもいいかもしれませんね。

学習方法などの紹介

このブログには教室の様子や生徒たちの発言など、様々なことを書いています。

でも

「なにか役立つ話はないかな」

「いい勉強方法はないかな」

と情報を求めて来られる方もわりといらっしゃるようです。

 

というわけで、「学習方法などの紹介」というカテゴリーを増やしました。

右はしのカテゴリー一覧から選んでくださいませ。

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「こういう本がおすすめだよ」

「こんな勉強方法があるよ」

という内容の記事を集めておきました。

よかったらご家庭で役立ててくださいませ。

先生のノート

生徒たちには

「習ったことを後から確認できるように、自分でメモしておくんだよ」

と、自主的にノートを取るように指導していますが、私も毎回の授業で必ずノートをとっています。

今日はそれをお見せしようかと思います。

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ある日の授業ノート。

 

授業1回につき、ルーズリーフ1枚を使います。

右肩にクラスや日付、上部にその授業を受けた生徒氏名をフルネームで書いておきます。

後は全体授業でやったことや話した内容、全員の生徒のその日の状況など気がついたことはなんでも書きとめておきます。 

一ヶ月たつと、1クラスで4枚のルーズリーフがたまります。

これをぺらぺらめくりながら

「今月この子はこんな勉強をしましたよ」

「こういう問題が解けるようになりましたよ」

「まだここが弱いのでこんなふうに練習をすすめています」

と一人一人の保護者に向けて報告のお手紙を書いています。

全員の授業での様子をすべて記憶することは私にはできないので、このノートがないとお手紙もかけません。

 

生徒たちのちょっとした発言、なにげない行動も、こういう小さな記録を積み重ねることで、大きな傾向がつかめてきます。

これを繰り返すことで

「この子はこういう勉強方法がいいかな」

「こっちの問題集の方が効果的だな」

と判断しているわけです。

少しでも生徒たちのデータを蓄積して効果的にメニューを組むために、ノートはとても大事な役割を担っています。

 

小さな情報をうまく積み重ねていく、これは勉強する時も大切ですよね。

記録上手になって、少しでもたくさんのものを自分の中に吸収して行きましょう。

自分に合った勉強方法を知る

話をしっかりと聞き、指示に従い、出された課題はきちんとこなす。

こういう「教えられ上手」さんは、いい塾やいい先生につけばどんどん伸びることが出来ます。

ただ、このタイプの子はいい塾や先生に出会えないと伸びない・・・という落とし穴があったりします。

誰かにあれをしなさい、これをしなさいと指示をしてもらわないと勉強ができないのです。

 

とはいえ、自分にぴったり合った指導をしてくれる人を探すのってかなり大変です。

どんなに評判がよくても相性が悪いこともあるし、いいところを見つけても遠方だったり時間が合わなかったり・・・。

たまたまいい指導者にめぐりあえたとしても、小学校から中学校、高校へとステージがかわったときに、同じ人に教えてもらえるとは限りません。

また、社会人になったときに仕事を学ぼうと思っても、上司や先輩が上手に教えてくれる恵まれた職場というのはおそらくとても少ないと思います。

 

結局はどこかの段階で自分で学ぶ力が必要になってくるのです。

 

教室では高学年の子たちにはできるだけ学習方法を自分で考える練習をさせます。

たとえば以前来ていた子で、一生懸命勉強して理解した内容を一週間ですっかり忘れてしまう子がいたのですが、

「どうしたらいいと思う?」

と尋ねると、

「もっとがんばって覚える」

と答えました。

この「もっとがんばる」はくせものです。

がんばると言った瞬間にその子の思考は停止してしまいます。

必要なのは気合ややる気ではなくて、具体策です。

結局この子はあれこれ話し合った末、

「自分は人よりも忘れやすいので、そのぶんノートを充実させて自分で思い出せるようにする」

ということを心がけるようにし、この教室の勉強だけでなく学校の授業の聞き方もそれでずいぶん変わったという話をききました。

 

気が短くて集中力が持続しない子なら目標を小分けに設定する、耳から入る情報の方が理解しやすい子なら教科書はなるべく音読して耳で聞く、人に話したほうが理解ができる子はなるべくいろんな子に教えてあげるようにするなど、自分に合った方法を知っていると、何を学ぶときにも役に立ちます。

 

私が生徒たちに一生

「あなたはこれをやりなさい」「こうしなさい」

といい続けられるわけではありません。

「先生、次なにをすればいい?」

「どうやったら点数上がる?」

と人に聞くのではなく、自分に出来ていることはなにか、足りないところはどこか、何をすれば自分は伸びそうなのかを分析できるようになってほしいなあと思っています。

 

「ゆとり国語教室があれば安心」

とずっと通ってもらえるのはとてもうれしいことですが、もっと嬉しいのは

「もうゆとり国語教室はいらなくなりました」

と巣立って行くこと。

教室のホームページにも「塾に頼らず、自分で学べる子を育てます」と掲げてあります↓

 

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通ってくださっている生徒さんたちも「いつかはひとり立ちするのだ」という意識を持ってもらえるとありがたいです。