これは以前別の場所でも書いた物ですが、習い事業界にいるものとしてこちらでも記しておきたいと思います。
私は教室に新規の生徒さんが来られるとき、できるだけ体験授業を受けることを進めますし、最初の1ヶ月でやめる場合は年間維持費もお返ししています。
また、年度の変わり目には
「そろそろやめようと思ってる人はお知らせしてね」
と促しています。
決して入ってほしくないわけではなく、通うかどうかを慎重に選んでほしいからです。
そう思うのは、以下のような理由があります。
みなさん子供に何かプラスになればと思って習い事に通わせていらっしゃいますが、習い事をするということは単純なたし算にはなりません。
1つ何かを身につけることで、必ずその時間にできる何かを犠牲にしています。
私が過去に見てきた生徒たちのうち、小さな頃からぎっしり習い事をしてきた子供達の多くは、無気力で省エネな解き方しかできなかったり、深く考える習慣がなくて習っていない問題は最初から諦めてしまう、などの傾向がみられます。(決して全員ではないです)
だから成績はそこそこよくても、底力がなくて伸び悩んでしまうのです。
毎日忙しくすごすことでほどほどにこなすことを覚えたり、いつも何をするか決まっているから、やりたいことを見つけられないのかもしれません。
子供の自由な時間はただ遊ぶだけではなく、自分の欲求に向き合ったり、未来に思いをはせたり、その日のできごとを反芻したり、そういう貴重な時間なのです。
また、どんなに教室でいろいろなことを習っても、生活の中で学ぶのと比べると質が劣ります。
どんなものをどこで買ってくるのか、道路の決まり、お金の流れ、料理や掃除の仕方、そういうものを一緒に学ぶことこそ、自立して生きてゆくための土台になると思います。
保護者の中には、自分に自信がなくて、専門家に子育てを託してしまっている方がかなり多いように思います。
「私はダメだから先生おねがいします」
と丸投げされるたびに悲しい気持ちになります。
習い事で得るスキルは、生きてゆく上で役に立つかもしれませんが、なくても大丈夫なものばかりです。
でも家庭で学ぶ「生活する能力」は、絶対に必要なものです。
自分と向き合い「わたしはどんな人間か」をみつめる時間も大切なときです。
だから習い事を決めるときは、
「貴重な時間をつぶしても、通う意味のあるものか」
「この子に必要なものか」
ということを慎重になって考えてほしいなと思います。
どうしてもあれこれやりたいお子さんには、値段や時間を見比べて、
「この範囲内で選びなさい」
と決めさせるといいと思います。
そこで選択しようと考えることで、その子が自分を知るきっかけになります。
やりたいものを全部やらせてもらってるうちは、本当の欲求、ひいては何者になりたいのかも気付かずに大人になってしまうとおもうのです。
追記
習い事をすることがプラスかマイナスか、そんな単純な話ではないです。
世の中には何かをやったから得られるものと、やらなかったから得られるものと両方あるのです。
人は何かを選ぶとき、選ばれなかった物を切り捨てています。
だから
「あれもできたらいいな、これもできたらステキ!」
という安易な気持ちで習い事を増やすのは避けてほしいなとおもいます。