たまに保護者の方から
「この子、前よりできなくなったかも」
「勉強しないから退化してる」
という相談を受けることがあります。
実際にその子の様子を見てみると、それは退化ではなく、進化の途中であることがほとんどです。
しかし「できなくなってる」と思うことで、その進化を止めてしまうことがあります。
ある生徒は音読がとても正確で、ミスなく読めることにずっと自信を持っていました。
しかし「絶対にミスをしない」ということばかりに集中しすぎて、素早く読んだり意味を捉えながら読むということができない状態が長く続きました。
この子が最近ようやく「スピーディーに読めるようになろう!」と意識して練習をはじめたのです。
毎回パーフェクトだった音読テストは、当然以前よりミスが増えますから、その結果に本人は落ち込みます。
そのたびに
「読み方変えたんだね、すごくいいよ!!前より難しいことやってるんだからミスしても気にしないで!」
と声をかけて励ましています。
これを乗り越えればさらに高い質の「読む力」が手に入れられるはずです。
しかし、もしここで「前よりできなくなった」と言われてしまったらどうでしょう?
チャレンジしようという気持ちはしぼみ、また以前のようにミスしないことだけに固執した読みに戻ってしまうのではないでしょうか。
そうなってしまったらその子の成長は見込めません。
努力すればきちんと能力が伸びるというのは間違いではありませんが、時間がかかるものです。
たし算とひき算で急にミスが増えたと思ったら、実はかけ算やわり算を覚えてどのやり方をすればいいのか混乱しているところだった。
やるべきことをやらず、わがままを言うようになったと思ったら、実は以前は自分の気持ちを伝えられずずっと我慢していた。
成長やチャレンジの途中で能力が下がったように見えることはよくあります。
しかし一時的に下がる勇気を持たなければ次のステップに進むことはできません。
目先の点数や成果にばかり注目していると、大胆な挑戦ができず、成長する機会を逃しやすくなります。
もしお子さんが退化しているように見えたら、安易に「だめになってる」と思わずに、何が身に付こうとしているのか観察してみてください。
もしかしたら意外な成長に気が付くかもしれません。
また、結果が出せずにお子さんが落ち込んでいる時は、その挑戦を認め、励ましてあげてほしいと思います。