先日保護者の方から
「うちの子は算数の長さと時計が苦手で、何回説明しても理解できないんです」
とご相談をいただきました。
ちょうどもう一人、同じように長さと時計でつまずいているという子がいたので、フリータイムで一緒に取り組んでみました。
確かに二人とも苦戦していて、
「1時42分の30分後」といわれると「2時72分」「12時12分」などと答えます。
「5cm4mm+6cm9mm」という問題には「24cm」と答えることもあります。
二人とも何度も教わっているので、「1分は60秒」「1cmは10mm」ということはわかっていますが、どうしても正解にたどりつけません。
みなさん、なぜこんな答えが出てくるのか、わかりますか?
ピーンときちゃいましたよ、わたし。
そこで私が次の授業で用意したのはコチラ。
ご家庭用の綿棒です。
10本ずつ輪ゴムで束にしてあります。
ここでひたすら綿棒をつかって計算の特訓をしてもらいました。
25+31は?と尋ねたら、束ねた綿棒5つとバラの綿棒6本を並べます。
計算の途中で10本になったら、すぐに輪ゴムでとめて束の仲間に加えます。
引き算で足りなかったら、束を解いてそこから引きます。
これを何度も何度も繰り返しました。
何を練習したのかというと、10の位の数字と1の位の数字の量の違いを、視覚的に掴んでもらったわけです。
なまじ計算を暗記して解けるようになった子は、数字の量をあまり意識していない子が多いです。
たとえば「26」という数字を見ても、「2」の方が表す量が多いということがピンときていません。
ただ学校で習ったとおりに繰上がりや繰下がりをやって偶然答えを出し続けているわけです。
こういう子が長さや時間にとりくんだとき、60分になったからといって時間が1個しか増えないのはわけがわかりません。
mmの数字が集まってcmの仲間に入るという感覚も、どうしても理解できません。
さきほどの問題に答えた子たちは、1の位も10の位も100の位も、時間も分もcmもmmも、全部同列の数字として捉えていたのです。
さきほどの問題も、60分になったら時間をひとつ増やすはずのところを、繰上りの時と混乱して10増やしたりしてるわけです。
mmを足し算したら13mmになって、10mmこえたらcmの数が増えるからといって11cm+13mm=24cmなんてことをしてたわけです。
全く正解ではない答えにも、勘違いしたその子なりの道筋というものがあり、それをみつけるのが正しく導く近道になります。
さんざん綿棒の輪ゴムをとめたりはずしたりした二人は、10の位は10コセットの束を数えているのだという感覚をしっかり身につけてくれました。
それから今度は長さと時間の説明をします。
時間は60本セットで輪ゴムでとめるんだよ。
cmはmmの10本セットだよ。
もうこれだけですぐに理解できました。
セットになったら束がひとつ増える。
減らすときに足りなければ束をひとつほどく。
きちんとイメージできているので、あっという間でした。
まだ定着するまでにもう少し練習は必要だとは思いますが、あとは問題数をこなせば難なく解けるようになると思います。
保護者の方からも
「できるようになってました!!あんなにやってもできなかったのにスゴイ!」
と喜びの声をいただきました。
たくさんやってもできなかったのは、そもそも引っかかりどころが別の場所にあったから仕方なかったんです。
本来は繰上りや繰下りの段階でもっと間違えているべき子どもたちが、なんとなく暗記や反復の慣れで、理解していないのに正解を出してしまうことがよくあります。
なまじマルがもらえるから発見が遅れてかなりやっかいです。
そのときはよくても、こうして別の単元や応用問題で思わぬつまずきをみせることになります。
マルをもらっていても、本当に正解するべくして正解しているのか、たまに解き方をチェックしてあげてくださいね。