ゆとり国語教室のブログ

愛知県犬山市にある小さな国語教室です。目標は塾のいらない子を育てることです。

音読と楽譜

すっかりご無沙汰しておりますが、久々にブログを更新しようと思います。

 

以前から音読の奥深さについて記事にも書いてきましたが、今日も似たようなお話です。

突然ですがみなさん楽譜は読めますか?

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「読めるよ」

「読めないよ」

など、いろいろな方がいらっしゃると思いますが、ではどのくらいから「読める」といえるのでしょうか。

私は趣味で少しだけ音楽をやっているのですが、読譜はあまり得意ではありません。

「読める?」と尋ねられれば「あまり読めない」と答えます。

 

基礎的な知識は一応あります。

どこがドでどこがレ、シャープやフラットがどこについているか、音の長さがどのくらいかなど、おおむね知ってはいます。

でもすごく遅いんです。

この音はド、この音はレ、次は3拍ミの音・・・とひとつひとつたどれたからと言って、それですぐに演奏できるわけではありませんし、そんな調子で読譜したとしてもどんな曲なのかさっぱりわかりません。

読み方を知っていたとしても、これで「読める」とはとてもいえません。

 

音読でも同じことがいえます。

あなたは、お子さんは、生徒さんは、書かれている文章を「読めて」いますか?

文字を覚えたらもう読めると思ってる方もいらっしゃいますが、そのレベルはさまざまです。

一文字ずつ

「これは『あ』、これは『い』・・・」

とたどっていても、何が書かれているのか頭に入ってきませんよね。

 

私が考える音読の最高レベルは、初めて読む文章を正確にスラスラと読み上げつつ、場面に応じて抑揚をつけたり声の調子を変えたりできることです。

音楽家が初見の曲を弾きながら解釈して、感情をこめて演奏するのと同じくらいです。

このくらいのレベルで読めるようになれば、多少難解な文章でも一読すれば書かれている内容が頭に入ってくるので、読解問題などはかなり楽になります。

 

そのためには、一字ずつたどっていたのでは、当然間に合いません。

ある程度かたまりで何が書いてあるのか把握して、瞬時に発音できなくてはいけません。

判断が遅いと書いてある通りにたどれなくて、想像や雰囲気で補う子もいますが、そんなことをすれば元の文と微妙に違ってきます。

また、感情をこめてとなると、自分が声に出しながら、その先に書いてある文を目で追って、内容にあわせてどんな声の調子で読むのか決めておく必要があります。

 

学校の宿題で「音読」が出るところは多いと思いますが、3、4年生くらいになると「できてる」「もう読める」と言って適当に済ませている子も多くなってきます。

でも本当にもう上達の余地はないでしょうか?

今の「読める」は、いったいどのくらいのレベルなのか、一度考えてみてください。

毎日の音読だけで伸びる余地もまだまだあると思いますよ。

自己分析~できていることを認める~

年度末の恒例となっている「自己分析作文」、今年も生徒全員に取り組んでもらいました。

自己分析と言っても特別難しいことをするわけではありません。

①いま自分ができていること

②できていないこと

③なぜできていないのか(原因)

④何をしたらできるようになりそうか(対策)

の4つの項目を考え、それを文にします。

これは自分で主導権を握って学習をすすめて行けるようになるための練習です。

いつでもピッタリの先生、ピッタリの教材に恵まれるわけではありませんし、丁寧にみてもらうにしても限界があります。

だから誰かに頼らなくても自分で自分に合った学習プランを立てられるようにして行こう・・・というわけです。

 

これから良くなるための自己分析なので、どちらかと言えば、できていないことをどうするかを考える②③④に重きを置くのですが、生徒によっては①を考えることこそ大切だという場合もあります。

 

たとえばある子は、自分ができていないことや原因、対策もすぐに答えられたのに、

「自分ができてることが1つも思いつかない」

「なんにもできてない」

と、かなり長いこと頭を抱えていました。

こうやって「できること」に答えられない子は他にも数人います。

どの子も特別他の子に劣っているわけでなく、むしろ優秀な子が多いくらいです。

それなのに、

「できていてあたりまえ、できてなかったら問題」

と考え、できないところばかり気にかけるから、自分の長所に目を向ける機会がなかなか持てないのです。

また、謙虚がすぎて「この程度じゃまだまだだから、できているなんて言っちゃだめだ」と考えてしまっている子もいます。

こういった考えで学習に臨むと、「どうせ自分はだめだから」と投げやりになったり「できなかったらどうしよう」と消極的になってしまう可能性もあります。

 

難しく考えることはありません。

授業中静かに話を聞ける、宿題を毎日ちゃんとやれる、自分から挙手できる、呼ばれたら返事ができる。

どんなことでもいいのです。

できることははっきりと認めてあげましょう。

自分を認めてあげたら自信に繋がりますし、自信は次の挑戦への踏み台になります。

 

自己分析は自分を客観的にみつめる作業です。

楽観的にも悲観的にもなる必要はありません。

できることはできる、できないことはできない。

今の状態を冷静にみつめることで、自分がどんなことに興味があるのか、どんなやり方が向いているのか、考えてみましょう。

 

もちろん、大人にもおすすめの作業ですよ。

ぜひ機会をみつけてやってみてくださいね。

塾代はなにに使ってるの?

以前、授業で読んだ文章に、物の値段の決まり方について書かれたものがあり、それをきっかけにこの教室の授業料についての話になりました。

 

・原材料があるわけではないから、あまり高額にするつもりはない

・長く続けて色々な子を伸ばしたいから、自分に負担がかかりすぎる値段設定はしない

・家族に我慢をしてもらう部分も多いから、その穴埋めができる金額でなくてはいけない

・安くしすぎるとなんとなくで通わせる人が出てくる

・今払ってくれている人に失礼になるから、仲良しの子でも値引きはしない

 

などなど、ふだんは話さないような教室のウラ事情を生徒たちにはなしました。

生徒たちの反応がとてもおもしろかったので、会話の一部をここに書いておきます。

 

「えー、塾って何もお金払わなくてもできるじゃん?

いいな、すごいもうかる!!」

「そうだね、いいなと思ったら将来やったらいいんじゃない?でも教えられるようになるまでは勉強がんばらないとね。」

 

「勉強できれば塾の先生やれるの?」

「やることはできるけど、それで生活できるかどうかはわからないよ。お金払ってもここで習いたいと思ってもらわないといけないから。」

 

などなど、子どもたちの反応は様々。

中でもおもしろかったのは、

 

「先生、俺たちが払ったお金をまさか家のことにつかったりしてないよね?」

「つかってるに決まってるじゃん。おいしいもの食べに行ったりしてるよ。」

「ええっ、ずるい!!」

「だってこれが先生の仕事だよ。君たちのお父さんやお母さんが仕事でかせいだお金は家のことに使ってないの?」

「あ、そうか。」

 

この子のように、私がいただいているお月謝と、自分の親が働いて稼ぐお給料が同じものであるということを認識していなかった生徒が大勢いました。

払ったお金はすべて何かしら教室運営のために使われていると思っていたようです。

もちろん教室のために使う部分もありますが、仕事である以上は収入も見込んであります。

 

子どもたちはまだとても狭い世界の中にいます。

塾や学校は勉強を習いに行くところ。

お店は物を買いに行くところ。

レストランはごはんを食べに行くところ。

そこに教える人や売る人、料理を作る立場の人がいるということを案外意識していないのです。

 

こういう話をするのはあまり上品なことではないかもしれませんが、お金の流れを知ることは世の中を知ることでもあります。

仕組みがわかっていれば楽な儲け話がそうそう転がっていないこともわかりますし、立場の違う人たちへの思いやりも生まれてくると思います。

これからも機会があればぜひ子どもたちに、こういった話を伝えて行きたいと思っています。

勝負は1回!

教室の音読のメニューの中では、一人ずつで挑戦するチャレンジメニューがあります。

 

●スラスラ読み

正確さを競います。

一文字でも読み間違えたらそこでチャレンジ終了。

単語を不自然なところで切ったり、言い直しも不可です。

ノーミスでどこまで読めるかをカウントします。

 

●スピード読み

スピードを競います。

早口で最初から最後まで読み上げ、何秒で読みきるかカウントします。

ミスをしても構いませんが、言いなおす必要があるため、間違いが増えればタイムは悪くなります。

 

●暗唱

本文を暗記します。

与えられた時間は3分間。

その間に何行覚えられるか競います。

 

 

どのチャレンジも、全員でミスがないか耳を澄ましている中で行うので、とても緊張します。

練習ではパーフェクトだった、本当はもっとたくさんできる・・・という子が、ほんの数行でミスをしてガッカリしたり悔しがることもあります。

あの子もこの子も

「先生、もう一回やらせて!!」

と言います。

でも同じ文章で再チャレンジは絶対にやりません。

中には不本意な結果で泣き出してしまう子もいますが、それでも2度目は行いません。

それは一回の本番できちんと実力を発揮できるようになってほしいからです。

 

本番で実力通りの力を出すのは案外難しいことです。

気負ってミスしてしまったり、緊張して頭が真っ白になってしまう子もいます。

「ほんとはできるのに」

と言う気持ちはわかりますが、その「ほんと」を大事な場面で引き出すことも大切な能力です。

 

本気で悔しがっている子や涙ぐんでいる子たちを見ると、正直胸が痛みます。

でもそれだけ悔しがれるのは本気で取り組んだ証拠。

そういう子はこれから絶対伸びてきます。

本気の一回勝負の経験をしっかり積んで、いざという時に満足な結果をだせるようになりましょう。

何をするのか決める前に

普通に学校の授業を受けていても、どこかしら取りこぼしがあるものです。

「点数が低いからとにかく勉強しなきゃ!!」

と、とにかく学習時間や課題を増やす子が結構多いのですが、あまり効率的とはいえません。

弱点を穴にたとえるのであれば、穴の位置や大きさを無視して、がむしゃらに土をかけているようなもの。

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 大量の時間、土を用意するのですから、いずれ穴は埋まるかもしれません。

しかし無駄も多いため、気になっている弱点を克服するにはかなり時間がかかってしまいます。

長期的に伸ばして行くには良いのですが、受験が近いとか、学校の授業についていけなくなっているなど、早めに成果を出したい場合は間に合わない可能性もあります。

部活をやっていたり習い事をたくさんやっている忙しいお子さんにもあまり向かないですね。

 

また、テレビの特集などで

「これが効く!!」

「○点アップまちがいなし!!」

なんて紹介されている問題集や学習方法に飛びつくのも考え物。

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運良く穴の位置とその方法がピッタリ合っていればすぐに埋まります。

しかしズレてしまっていれば関係ない山をただ築くだけになってしまいます。

 

 

弱点を克服するとき、まず最初にするのは弱い場所を特定すること。

そしてなぜ弱くなるのかその理由を探ること。

何をするのか決めるのはそれからです。

 

ただ算数が弱い、国語が弱いとざっくりとらえずに、算数の中のどの分野、どんな問題にどんな答えを書いて間違えるかなど、よく観察してデータをとってみましょう。

その子が本当にどこでひっかかっているのかがだんだん見えてきます。

そうすればどんな学習をすればいいのかも決めやすくなります。

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できれば場所だけではなく、どんな土を持ってくるのかとか、どんな道具があれば埋めやすいのかなんてことも考えられると良いですね。

そのためにはとにかくその子を観察することです。

 

「何をしたら・・・??」

と、考える前に、まずはじっくりその子のミスを集めて傾向を探ってみましょう。

注意点は3つまで~教えることを選ぶ~

子どもが勉強をしているのをみていると、色々なことが気になってしまいます。

 

字が汚い。

書き順が違ってる。

解き方が間違ってる。

また単位を付け忘れてる。

公式の意味を勘違いしてる。

問題文を読み違えてる。

計算ミスしてる。

 

ちゃんと子どもに指導してあげようと思っている人ほど、気になることをあれもこれもと言い過ぎてしまいます。

でも言えば言うほど子どもは不機嫌になり、それを見て親も苛立ち・・・なんてことはどこの家でもよくある話。

 

しっかり指導をしようとしている皆さんに、私がお伝えしたいこと。

それは

一度に教えるのは3つまで

ということです。

別に「3」という数字にこだわる必要はありませんが、要は数を限りましょうという話です。

人が一度に気を配れる量は意外と少なく、注意点が多ければ多いほど子どもは混乱します。

あれもこれも気をつけようとしても、結局どれも中途半端になってしまいます。

だからポイントをしぼって、

「他はともかく、これだけは気をつけよう」

と声をかけてあげるのです。

これで子どもは安心して、必要な課題に集中することができます。

 

数を限定すると、教える側は気軽にあれこれ声をかけられなくなります。

ささいな点をいちいち指摘していたら、あっという間に教えられる3つを使い切ってしまいます。

3つを効果的に使うためにも子どもの様子をよくよく観察して、

「この子が今一番注意すべきなのはどれだろう」

と、考えるようになり、結果として課題の優先順位ができます。

言わずに我慢した4つめ以降の注意点は、またトップ3のどれかができるようになったときにまた指摘すればいいのです。

 

子どもが必要なポイントに安心して集中できるように、「注意点は3つまで」をぜひ気をつけてみて欲しいなと思います。

【感想文練習】内容を指定して書く

まもなく7月。

教室の生徒たちは、夏に向けて感想文の練習を行っています。

今取り組んでもらっているのは、指定された内容に沿って文に起こしてゆく練習です。

たとえば今月音読している源氏物語の桐壺の部分について、生徒たちの意見を参考にしながら、

 

【意見】天皇が悪い

【理由】自分のことしか考えていない

例①ルールを守っていない(女御を大事にするべき)

例②自分が会いたいばっかりで更衣がどうなるか考えてない

例③いじめから守ってあげていない

 

という枠を決めました。

この枠にしたがって、全員で同じ内容の作文を書いてもらいます。

 

内容も書く順番も決まっているのですが、文にするとなると意外と戸惑う場面が多くあります。

「あれ?文の終わりはなんて言えばいいの?」

「つなぎ言葉(接続語)は何をつかえばいい?」

「なんか書いてるうちに色々混ざっちゃった」

など、皆それぞれ苦手なところで手がとまっていました。

 

内容を考えながら作文を書くと、文章の内容と文体の両方に気を配らなければならないため、頭の中で処理する情報量がとても多くなってしまいます。

書き慣れていない子は、文を書いているうちに何を書こうとしていたか忘れてしまったりするため、なかなか進められません。

だからこうして内容を指定して、文を書くことそのものに集中してもらうのです。

 

もしお子さんが文章を書くこと自体が苦手なようなら、このようにあらかじめ内容を決めて練習してみましょう。

授業では生徒の話を聞きながら私が内容を決めますが、実際にある文章のまねをして同じ内容を作文にするという方法もあります。

うまく文のことだけを考えられる環境を作って、取り組んでみてくださいね。